+++拍手LOG




+++親善大使さまの冒険5





 森と言うのは屋敷の裏庭と似ているからきっとアレもあるはずだと、ルークは休憩時間に下草を覗きこんだ。木漏れ日が模様のようにゆらゆらと揺れながらも下草を照らしてくれる。

 ルークは枝をかきわけて中を覗き込む。目的のものは見当たらなかった。次の木の下へ場所を移動する。数本目に目当ての物に辿りついた。

 そのころには膝には泥と草の汁がついてしまっていたが、掃えば問題ないだろう。



 枝の陰でそっと隠れるようにいる茶色の抜け殻。堅いけれど脆いそれは取扱を慎重にしなければ、すぐに壊れてしまうことをルークはよく知っていた。そっと手を伸ばしてそれを苦労して絡んだ枝から外した。

陽の光を受けて透き通った茶色のそれはかっこよくて美しい。太陽の下で見ればつるりとした目の部分が、やはりとても綺麗だと思った。

 今、手にしたものは屋敷で見ていたものと少し違った。手にとって見ればますます違いが明らかになった。小さくて形も違う。これをこのまま放置していく気になれずにルークは手の中で転がした。

 いつまでも手に持っているわけにはいかない。

 繊細ですぐに壊れてしまうものなのだから。いつもなら綿に包んで箱に並べるのだけれど残念なから今はその箱がない。

 この新しい宝物を手放すのはなんとなく惜しい。





  



あの日のことが脳裏をかすめて、くすぐったい気分になった。



 不器用なルークにはそれは初めて原型を留めて回収できた物だった。だから母上に見せようと意気揚々とそれを差し出したのだ。

「母上!綺麗!」

「ルークの審美眼は素晴らしいわね。ええ……本当に素晴らしいわ。よくこれを見つけられたわすごいわねルーク」

 感心したように母上はそう言ってルークを誉めてくれた。あの時からルークにとってこの透明な茶色の物は宝物になった。



 そして母上は綺麗な箱を用意してくれて綿に包んでそれを並べた。

 箱についた色とりどりの光る石よりもその抜け殻達はとても輝いて見えた。









 だって、今まで見たこともない抜け殻は、きっとすごいに違いない。持ちかえって同じものしか並んでいない箱の中に入れたい。きっとそうすればあの箱の中のものももっと輝くように思えた。

 

 ルークは荷物の場所に戻って薬を入れていた瓶を開けた。中は開いている小袋へと開けておけばいいだろう。瓶の中に宝物をそっと入れてルークは瓶の蓋を閉めた。

 母上の持っているような綺麗な模様や色のない瓶は少し宝物を入れるには物足りない気がしたが、太陽に透かして見れば透明の瓶は中がよく見えた。これ以上これを入れるにふさわしい容れ物はないように思った。

 かさりと乾いた音を立てて瓶の中で抜け殻が躍った。

 ルークの心も同じテンポで弾んだ。すごい物を手に入れた!



「ルーク!」

 ガイが出発だと呼んでいた。

「おう!」



 ルークはそっと瓶を荷物入れに入れた。

 とても素敵な宝物が手に入った。これは誰にも秘密だ。欲しいなどと言われては今からではもう一つは見つけられない。

 内緒だ。



 宝物を見つけたことはガイにも内緒だ。





 だけど屋敷に帰ったら母上にだけは見せてあげてもいいかな。とルークは想像して楽しくなった。きっと母上は美しいですねと喜んでくださるだろう。

 あの日のように……







+++END+++




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