+++拍手LOG



+++親善大使様の冒険 1 +++



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 ルークは長い髪が地面についていることを気にもかけずに、じっと河を覗き込んでいる。大きな河を見たことがないので興味を持ったかとガイは微笑ましく思い。昔のように頭から落ちることもないだろうと斜め後ろに立ってその様子を見ていた。
 手を伸ばしてそれを取ろうとしているようにも見えた。
「あまりのぞきこんでいると落ちるぞ」
「ガイー!見てみろよ!すげーぞ!!」
 やはり何か目新しい物を見つけたようだ。河の中を指差して見上げる瞳は宝物を見つけたといわんばかりにキラキラと輝いていた。
「何があったんだ?」
「見てみろよ。色のない魚がいるぜ!すげーよ。新発見だったらどうしよう」
「へぇ……」
 興奮するルークの言葉にどういうことだろうかとガイはルークの横にしゃがみこみ河の中を覗き込んだ。日差しを反射して光る水面の向こうに水流に逆らうように魚が懸命に泳いでいる。ルークが言うような色のない魚というのがどれのことかわからない。白い魚がいるということだろうか?と見回すがそれらしい魚は見当たらない。
「な!すげーだろ?!あれ捕まえられねぇかな?母上にも見せてあげたいなぁ」
「いや……わりぃ……どのあたりにいる?」
「ガイって視力悪いのか?目の前にいるだろ!ほら!そこ」
 ルークは水流に逆らって泳ぐ魚を指差した。背が黒いごく普通の魚にしかみえない。アニスも新発見という言葉に引かれたのか敏感に感じとりガイと反対側で水面を覗き込む。
「えーどこどこ?珍しい魚ってどれ?!」
「ほらそこ!そこにいるじゃん。背中が黒い!!」
 ルークはガイが見ていた魚を追って指を動かす。ガイが見ているものはルークが言っているもののようだ。
「それか……普通の魚にしかみえないんだが?」
「……え?」
 ルークはガイの普通の言葉に表情を固まらせる。
「普通……?」
 アニスが途端にがっかりしたように大きな溜息をついた。
「なーんだ。あのフナのことかぁ……」
「何言ってんだよ!!すげー変わった魚だろ?色も柄もないんだぜ?あー池にも欲しいよなぁ。黒くてカッコイイぜ」
 ルークは気を取り直して言いつのる。あんな変わったものが普通であるはずがないと声を大にして叫んだ。
「どこがー全然珍しくもないよ。あんなの100ガルドにもなんない〜〜!綺麗な柄とか色じゃないと駄目〜〜」
 アニスが残念そうに叫ぶ。ガイは独りああなるほどと納得をしてしまった。ルークにはそうであったかと。

「何を騒いでるんですかぁ?」
 ジェイドがいつもの調子でルークの頭上越しに河を覗き込む。
「夕飯になりそうな魚でもいましたか?」
「ええー大佐〜〜あれを捕まえるんですか〜〜?」
「夕飯って!お前らあんな変わった色の魚を喰うつもりか?!どちらにせよ俺はくわねぇけど!!」
「ルーク。珍しくって高く売れる魚はね。観賞用の赤とか金とか黄色とかで綺麗な模様のある魚なんだよ。あんな黒いのは食用にしかならないしぃ高くも売れないのぉ。期待させないでよぉ〜」
「はぁ?色があったり柄があったりするのは普通だろうが!それに魚は指を喰うし危険なんだぞ」
 ルークは身体を震わせ思わず自分の指を確認した。ガイは思わず昔のことを思い出し笑ってしまう。
「ガイ!何を笑ってるんだ!!」
「だって、ルークが池の鯉に餌をやろうとしてものすごいことになってたときのことを思いだして」
「だってあいつら大きな口を開けて群がって超こえぇ……あの時は本当に指を喰われるかと思ったんだぞ。すんげー痛いからな。アニス。魚は指を喰うから気をつけろよ」
「だからそれは観賞用だって言ってるのにぃ」
「魚はこえぇぞ」
 ルークは心の底から恐怖を感じているらしくアニスに注意を促していた。ジェイドがその後ろが笑いをかみ殺して震えていた。
「なぁガイーこれ捕まえてくれよ。これみたいに大人しくてカッコイイ魚なら母上だって安全だし」
 ルークにねだられると断れないガイは困惑はしながらも、こんなにルークが欲しがるならば捕ってやらないこともないなと思い始めたころにジェイドが珍しく口を挟んだ。
「今ですか?まだ旅の途中ですよ」
「そっか。なら帰りにな!!」
 ルークは上機嫌で河の中をもう一度覗き込んだ。おお!こっちにも黒いのが居るぜ!と興奮気味にはしゃぐ姿をアニスが呆れて眺めていた。愉快そうに笑みを浮かべるジェイドがいらぬことを吹き込む前にルークを安全なところへと誘導しなくては!ガイはルークの興味を引きそうなものはないかと素早く辺りを見回した。



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